• The企画エルサーチ株式会社

●● 第1回「食のプロフェッショナルに学ぶ」●●

■日 時:2007年7月19日(木)
10:30~12:30
■会 場:アピオあおもり大研修室 

エルサーチの原点である「食」をテーマとした新事業
「エルサーチの食塾」第1回を7月19日に開催しました。
当日の様子をレポートします。

新事業「エルサーチの食塾」とは

 記念すべき第1回の参加者は、24名。青森市内だけでなく、三沢や鯵ヶ沢からも足を運んでくださいました。
 最初に、蒔苗代表が「エルサーチの原点ともいえる“食”について、いま一度、その根本を考え、共に学ぶ場をつくっていきたい」と、新事業にこめた思いを話して、開会の挨拶としました。

佐藤光義先生のお話

■■「レストラン」その本当の意味とは…

 エルサーチの食塾・第1回は、「食のプロフェッショナルに学ぶ~“レストラン”その本当の意味とは…」をテーマに、青森調理師専門学校の副校長・佐藤光義先生のお話を聞きました。
 少し緊張気味の参加者を前に、まず、ご自身が料理人になったきっかけから話し始められました。高校を卒業するとき、自分の好きなことを仕事にしては、というアドバイスを受けて選んだ仕事だということ、「食べること、作ることが好きで好きでたまらない」「24時間仕事しても疲れを感じないくらい楽しい」という先生のお話に、どんどん引き込まれていきました。

 さて、「レストラン」の本当の意味についてのお話です。
 今もフランスに残る世界最古のレストランの跡地は、日本でいう「峠の茶屋」のようなところで、行きかう旅人に「元気の出る食べもの(restaurerレスチュラール/回復させるという意味)」を提供していました。それがだんだん食べものを主に提供する場所へと変化し、「レストラン(restaurant)」と呼ばれるようになったそうです。「場所」を示す「レストラン」と、「食」との間には、深い結びつきがあったのですね。
 また、ヨーロッパでは、調理師と医師はともに「命、元気をつかさどる人」として、古くから同格とみなされていること、アメリカに現存する最古の医学書の半分以上は料理に関する記述であるというお話に、参加者のみなさんは驚いたり、感じ入ったりしながら耳を傾けていました。

■佐藤光義先生のプロフィール■
青森市生まれ。高校卒業後、東京へ。高輪プリンスホテル、ホテルオークラ等での経歴の他、フランス、ドイツ、イタリアなど海外研修経験も豊富。1992年には、第18回世界料理オリンピック大会の日本代表Aチームのキャプテンとして、日本初の銅メダルを受賞。
青森調理師専門学校副校長、全日本食肉協会料理コンテスト審査員、全日本司厨士協会北部地方青森県本部役員など様々な要職を歴任。また、NHK青森放送局「ゆうYOU青森」にもレギュラー出演。

■■「プロ」と「アマ」のちがい

 「“にんじん”を思い浮かべてみてください」。いきなりの質問に、とまどう参加者のみなさん。さらに「そう言われて思い浮かんだ方は、アマチュアです。プロは思い浮かべられないんです」と続くと、謎は深まる一方です。
 「“にんじん”そのものの色や形を思い浮かべるのがアマ。にんじんといっても、さまざまな種類がある。まず献立を考え、それに適した品種のにんじんや部位を思い浮かべるのがプロ」と聞いて、ようやく納得。
  また、食材を選ぶとき「どこを見るか」「どう見るか」、しぐさや見方にプロとアマのちがいがはっきり現れる、それはつまり、「経験の積み重ねによるちがい」というお話に大きくうなずく参加者のみなさんでした。

■■ 「Lady」の意味

 よく耳にする「Ladies and gentlemen(紳士淑女のみなさん)」という呼びかけについて、佐藤先生から新たな質問。「男性はGentlemanなのに、なぜ女性は○○womanでなく、Ladyというのでしょうか?」
 ここにも、「食」につながる深い意味が隠されていました。ladyとは、もともと「パンを焼く人」をあらわす言葉だそうです。日々の糧であるパンがうまく焼けなければ、家族みんなの命が養えない、Ladyは「命を守る」という重い役割を担う立場であったこと、だからこそ大切にされ、すべての人に優先される=レディーファースト(lady first)の考え方が生まれた…思いがけない「食」と「女性」との結びつき、そして、その役割を自分もまた負っているという思いに、参加者のみなさんの表情も真剣になっていました。


 さて、ここで問題です。
  イタリアの国旗を彩る緑、白、赤の3色は、それぞれ「食べもの」を表しているそうですが、みなさんは何かご存知でしょうか?
 緑は「オリーブ」、白は「小麦」、赤は「トマト」だそうです。食べものを国旗にしたのは、世界でもイタリアだけだそうです。イタリアの人々の食に対する思いは、国旗にも現れているのですね。


 ヨーロッパの片田舎だったフランスに料理という文化を持ち込んだのはイタリア人だったこと、1970~80年代にかけて世界中に広がったファーストフードの波に対して、昔ながらの土地の料理を守ろうと北イタリアの小さな村の人たちが提唱した「スローフード」についてのお話など、イタリアの人々の「食」や「自然に生きているもの」への思いの深さを聞いていると、便利さや合理的なものばかりをよしとしがちな生活を反省しました。

■■ 「本当のフランス料理」

 フランス料理というと、高級レストランで食べるフルコースが思い浮かびますが、実はポトフなどの煮込み料理に代表される家庭料理、田舎料理が「本当のフランス料理」なのだと、佐藤先生。フランスの家庭では、今も嫁ぐときに「おばあちゃんの鍋」を持っていく習慣があるそうです。「おばあちゃんの鍋」、すなわち「家庭の味」が大切にされ、次の世代に受け継がれていることに感動しました。
 また、コンビニ弁当から手作りのお弁当になって元気になった幼稚園児の話を例に「料理は“おいしい”の前に、“愛情”が必要」「買ったもののようにおいしくなくても、手をかけたものは家族の心に伝わる」と話し、「Ladyの使命を忘れないで」という佐藤先生の言葉に勇気づけられる思いでした。

■■ 「女が最後に望むもの」?

 大帝国を築いたアレキサンダー大王の逸話を語る佐藤先生から、逸話に登場する魔女の言葉として、最後の質問。「女が最後に望むものは?」。これまた難しい問いでしたが、200年に及ぶ魔法を解いたのは「最後は自分で決めること」という言葉だったそうです。
 今回、佐藤先生が話してくださった「食」につながるさまざまなエピソードは、女性としての生き方の根本にかかわるものも多く、深く心に残るお話でした。

 「口下手だから料理人になった」という自己紹介とは裏腹に、津軽弁をまじえた軽妙な語り口で話される興味深いお話に、予定の時間を過ぎたことにも気づかないほど。日々関わっている「食べること」について、深く考えることのできた2時間でした。佐藤先生、ありがとうございました。

エルサーチでの講義の後、入院されていた佐藤光義先生は、9月6日にご逝去なさいました。
ご生前の先生のお教えに深く感謝いたし、謹んでお悔やみ申し上げます。

2007年9月9日
The企画エルサーチ 一同


 参加者のみなさんに配布した資料(東青地区産地直売施設案内マップなど)の説明をして、第1回「エルサーチの食塾」は無事終了。これからシリーズで展開していきますので、次回企画をどうぞお楽しみに!!

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