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パワーあふれる自然食・アピオス
「カマラードの家」竹洞雍子さん
青森県三戸郡五戸町
(さんのへぐん・ごのへまち)
リンゴが結ぶ縁
竹洞雍子さんは、青森県南部の五戸町倉石で、ニンニクやリンゴとともにアピオスを育てています。地元の農家の女性6名とともに設立した「カマラードの家」では、倉石の特産物を使った加工品の製造・販売に取り組み、「農山漁村女性チャレンジ活動表彰・農林水産省経営局長賞」や「第6回食アメニティ・コンテスト国土庁長官賞」を受賞するなど、その活動は高い評価を得ています。
■■北米生まれのパワフル野菜・アピオス
アピオスは、別名「ホドイモ」と呼ばれ、見かけもイモの仲間のようですが、実はマメ科の植物。生まれは北米で、明治時代にリンゴの苗木が輸入されたとき、その根っこにくっついて日本にやってきたと言われています。リンゴが結ぶ縁で、国内では青森県が主産地。現在は、倉石の他、天間林村や藤崎町などで栽培されています。
アピオスの特徴は、なんといってもその栄養価にあります。ジャガイモと比べると小粒ながら、エネルギーは2.5倍、たんぱく質は3.2倍、鉄分は3.8倍、カルシウムは30倍も多く含まれています。青森県の農家では昔から食べられていたそうですが、数年前に健康に様々な効能があるとテレビ番組で紹介され、一躍脚光を浴びるようになりました。
収穫まで無農薬で
■■農薬をまったく使わず栽培
竹洞さんは、20アール(1アール=100平方メートル)の畑2カ所でアピオスを栽培しています。長芋を作っていた畑を転作してアピオスを作るようになったそうです。
春に堆肥をまいて種イモを植えつけ、収穫は晩秋11月下旬ごろ。その間、竹洞さんの畑では農薬をいっさい使わずに育てています。合計40アールの畑から約4トンの収穫があります。
■■あでやかな花の「お茶」
春にまいた種イモは夏が来るころには高く伸びて2メートル以上になり、あでやかな花をつけます。藤の花を小さくしたような房状の花は香りが濃厚で、時には数キロ先まで香りが広がることもあるといいます。
アピオスのイモを大きくするには、花をなるべく摘み取っておく方がよいのですが、文字どおり鈴なりの花を一つひとつ摘んでいくのは大変な作業です。
「摘んだ花を乾燥させると、お茶になるよ」と、竹洞さんが教えてくださったので、家に持ち帰った花で挑戦してみました。
乾燥した花房にお湯を注ぐと、枝豆を茹でるときのような香ばしい匂いに、濃厚な花の香りもほんのり。素朴な味わいのおいしいお茶でした。
■■雪が降っても凍っても
アピオスの「イモ」といわれる食用部分は、細長い根にネックレスのように連なってできる塊根。竹洞さんが「このあたりから下にイモができるんだよ」と、よく繁ったツルをかき分けて根元の部分を見せてくださいました。
秋、地上部分の葉が落ち、ツルが枯れたら収穫です。ツルが残っているうちでもよいのですが、枯れ落ちてからの方が甘みが増すので、竹洞さんはツルが枯れるのを待って11月下旬ごろ収穫しています。
収穫の最中に雪が降ったり畑が凍ったりすることもあるそうですが、アピオスは寒さに強く、マイナス40℃ぐらいまでは全然平気と聞き、生命力の強さに驚きました。
消費者の立場になって
■■おいしく、安心な食べものを
竹洞さんは、収穫したアピオスを追熟させた後、ゆでてパック詰めし、冷凍して販売しています。アピオスはアクが強いので、ゆでた鍋が真っ黒になってしまうこともあるからです。消費者の側からすると、下ごしらえの手間なく、ほしいとき、必要な分だけ使うことができて、とても便利です。
無農薬栽培に加え、下ゆで・冷凍加工して販売する過程には、消費者の立場になって考え、「おいしい食べものを、安心して、気軽に食べられるように」という竹洞さんの思いがこめられています。
(取材日:2008年8月12日)
(reported by Yamamoto)
(※情報は取材当時のものです)