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南部地方に伝わる和のエディブルフラワー
干し菊・川井ミナさん
青森県三戸郡南部町
(さんのへぐん・なんぶちょう)
江戸時代から伝わる伝統の加工品
南部町は、岩手県と境を接する県南部の町。さくらんぼや洋梨などの果物、にんにく、長いもなどの野菜と並んで、食用菊の栽培が盛んです。
今回は、食用菊の栽培から干し菊の加工までを手がける川井ミナさんの畑を訪ねて、お話をうかがいました。
■■ルーツは中国
川井さんの畑を訪れたのは、10月下旬。畑には、収穫間近の菊が香り高く、色鮮やかに咲き誇っていました。菊は、薬草として中国から伝わり、日本では古くから食用とされてきた、いわば和のエディブルフラワーです。
食用菊にはいくつかの種類がありますが、川井さんが栽培しているのは、「阿房宮」という黄色い菊です。阿房宮とは、古代中国・秦の始皇帝が立てた王宮の名。当地での食用菊栽培は、江戸時代に南部藩主が京都から取り寄せたのが始まりだそうです。
■■苗づくりから自分の手で
干し菊づくりは、春、挿し芽で苗を作るところから始まります。長さ約60メートルの畝に400~600株、川井さんの畑は6畝あるので、2,400~3,000本の苗が必要ですが、川井さんはそれをすべて自分で作っています。
「菊の栽培は、そんなに難しくないですよ」と川井さんはいいますが、茎が倒れて花が傷むのを防ぐため、一株ずつ支柱に結わえてあったり、雨で土が流れないように株元の草を残してあるなど、畑のあちこちに細やかな気配りが行き届いていました。
さらに、収穫が近づいてくると、畑全体に覆いをかけて雨や霜から花を守ります。
■■収穫したその日のうちに加工
菊の収穫は、10月下旬から11月初旬ごろ。「菊づくりでいちばん大変なのは収穫」と川井さんも言うように、鎌で根元から刈り取り、汚れや傷みのないきれいな花びらだけを取っていく、手間と根気のいる作業です。1つの畝を収穫するのに、3日ぐらいかるそうです。
収穫した菊は、その日のうちに加工します。
まず、花びらをほぐして計量し、型枠の中に平らに広げます。それをベルトコンベアに載せ、95~100℃の蒸気の中を30~50 秒ほど通して蒸します。
蒸し上がったら、乾燥用の枠の上で型から外し、並べていきます。何と、この乾燥用の枠は、川井さんのご主人の手作りだそうです!!
その後、17~18時間かけて乾燥させると、美しい花の色や芳しい香りをそのままに残した、干し菊ができあがります。
1日に4キロのりんご箱40箱分の花びらを加工すると聞いて、美しくおいしい干し菊をつくるためのみなさんのご苦労を改めて感じました。
ほぐした花びらを計量 → | 型枠に平らに詰めていきます。 |
型枠をベルトコンペアに載せると → | 蒸気をくぐって出てきます。 |
型から外して → | 乾燥室へ |
天気のよい日は、戸外で乾燥 | 色鮮やかな干し菊の完成!! |
後の時代にも伝えたい
■■新しい時代へ
川井さんの畑から生まれる干し菊は、年間約10,000袋。家族で作業をすることで「菊作りを次の世代に伝えていきたい」と、川井さんは言います。
菊の味や香りが一年中楽しめ、ほしいとき必要な量だけ使える干し菊は、とても重宝な素材。最近では、おひたしや和え物など伝統的な食べ方の他、パスタやマリネなど新しいレシピも生まれています。古くから伝わる食用菊文化は絶えることなく、新しい時代に受け継がれていこうとしています。
(取材日:2008年10月27日)
川井さんの干し菊は、ここで買えます。
青森県内
●ふくちジャックドセンター(農産物直売所) ☆発送も可能
TEL・FAX 0178-84-4520
〒039-0802 青森県三戸郡南部町大字苫米地字上根岸73-1
首都圏
●あおもり北彩館 東京店(青森県のアンテナショップ)
TEL 03-3237-8371/FAX 03-3237-8372
〒102-0071 東京都千代田区富士見2丁目3-11青森県会館1階
(reported by Yamamoto)
※情報は取材当時のものです。